大判例

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新潟地方裁判所 昭和26年(ワ)126号 判決

原告 中村孔 外三名

被告 日本通運株式会社

一、主  文

原告等の請求をいづれも棄却する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

二、事  実

原告等訴訟代理人は、被告は原告等の就業を妨げてはならない、被告は原告等に対し、別紙第一目録記載の各金員ならびに昭和二十六年四月一日以降一カ月につき別紙第二目録記載の各金員をいづれも毎月二十五日限り支払へ、訴訟費用は被告の負担とする、との判決及び右金員の支払を求める部分について仮執行の宣言を求めその請求の原因としてのべた事実の要旨は、

一、被告会社は東京都に本店を置き、新潟市にある新潟支社、三条市にある三条支店を含め全国に九箇所の支社及び約三百数十箇所の支店を有し通運業を営む株式会社である。

二、而して原告中村孔、石原彰人は新潟支社に、原告宮島作次、牛腸キクは三条支店にそれぞれ被告会社の従業員として勤務していたものであるが、原告等の所属する労働組合が昭和二十五年七月八日会社に対して争議行為をなした事を理由として原告中村孔、石原彰人は昭和二十五年七月十七日附、原告宮島作次、牛腸キクは同年同月十八日附で被告会社からいづれも懲戒解雇されたのである。

三、原告は右懲戒解雇が労働組合法第七条の規定に違反する不当労働行為であることを理由として同年同月二十二日新潟県地方労働委員会に対して同法第二十七条第一項の規定により救済の申立をなしたところ、同委員会は同条の規定によつて調査及び審問の手続をなした結果、原告等の申立を理由あるものと認め昭和二十六年二月二十日「被告会社は、原告等に対する前記解雇をいづれも取消し、それぞれ当時の状態に復帰させなければならない」との趣旨の命令をなし、右命令書の写はいづれもその頃原告等及び被告会社に交付された。

四、而して新潟県地方労働委員会の右命令により、その私法上の効果として原告等に対する前記解雇は取消され、原告等は従前の従業員たる地位を回復したのであつて、地方労働委員会の命令は交付の日からその効力を生じ、使用者が中央労働委員会に対して再審査の申立をなしてもこれによつて右命令の効力は停止されず、中央労働委員会の命令はいまだ発せられないのであるから、被告会社はその従業員である原告等をして職場に復帰せしめ、且つ原告等に対して解雇の翌日より昭和二十六年三月末日までの各賃金の合計である別紙第一目録記載の金員ならびに同年四月一日以降の賃金として一カ月につきそれぞれ別紙第二目録記載の金員を、被告会社就業規則所定の支払日である毎月二十五日限り支払うべき義務がある。

五、よつて原告等は被告会社の従業員たる地位に基いて被告に対しそれぞれ右義務の履行を求めるため本訴に及んだのであると謂うのである。(証拠省略)

被告訴訟代理人は主文と同趣旨の判決を求め、その答弁の要旨は、

(一)、原告等主張の一、二、三の事実はいづれもこれを認める。

原告等主張の四の事実中被告が新潟県地方労働委員会の命令に対して再審査の申立をなしたこと地方労働委員会の命令が交付の日からその効力を生じこれに対して再審査の申立がなされても命令の効力は停止されないこと中央労働委員会の命令がまだ発せられないこと及び原告等の解雇直前の賃金の額及び就業規則による賃金支払日がいづれも原告等主張の通りであることはこれを認めるが、その余はいづれも否認する。

(二)、(1) 新潟県地方労働委員会の本件命令は原告等主張の如き私法上の効力を有するものではない。

(2) しかも右命令は原告主張の如き内容のものでその履行方法の具体的内容を明示していないから中央労働委員会規則第四十三条に違反し無効のものである。

(3) 仮りに右命令が有効であるとしても、右命令は賃金支払の点については何等触れていないから此の点について効力を生ずべきいわれがない。仮りに賃金についても何等かの効力があるとしても原告等は解雇当時より引続いて争議行為をなしているからこれに対して賃金を支払うべき義務はない。

と謂うのである。(証拠省略)

三、理  由

原告主張の一、二、三の各事実は当事者間に争がない。

よつて新潟県地方労働委員会の本件命令によつて原告主張の如き私法上の効果を生ずるか否かの争点につき按ずるに、地方労働委員会が労働組合法第二十七条第二項の規定によつて発した命令は行政処分として使用者に対しこれに服従すべき公法上の義務を負わしめるのみであつて使用者がこれに服従しない場合は、行政代執行法第二条所定の要件を具備する場合に限り当該委員会においてその代執行をなすことが出来るが、そうでない場合には、使用者は労働組合法第二十八条第三十二条所定の各違反について同各条所定の刑罰等に処せられることによつて間接に強制されるに止るのであつて、何等使用者と労働者との間の私法上の法律関係を発生、変更せしめる効力を有するものではない。労働者が不当労働行為に対する私法上の救済を求めるためには別に、裁判所に対して使用者を被告として解雇無効又は従業員たる地位の確認を求め若くはこれに伴い解雇無効によつて従業員たる地位を保有することを理由として賃金支払請求の訴を提起する(同法第二十七条第九項)ほかはないのである。

さすれば新潟県地方労働委員会の本件命令によつては、原告等と被告会社との間に原告等に対する本件解雇が取消され原告等が従前の従業員たる地位を回復すると云う私法上の形成的効果を生ずるはずがないから、此の様な効果が生じたことを理由として被告に対し就業妨害禁止ならびに賃金の支払を求める原告等の本訴請求は、その余の争点につき判断するまでもなく失当たるを免れない。

よつて原告等の請求をいづれも棄却すべきものとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 松永信和)

(別紙目録省略)

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